計算力と計算に対する意識の男女差、調査結果のポイント
この調査では、子どもたちの計算力と、計算に対する意識(好き・自信)について、男女差があるかどうかを詳細に分析しています。特に注目したいポイントは以下の3つです。
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計算力に大きな男女差はないケースがほとんど: 調査対象となった10のグループ(5か国×2学年)のうち、8グループで計算テストの正答率に統計的な男女差は見られませんでした。これは、多くの国で計算の「実力」そのものに性別の違いが少ないことを示しています。
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「実力は同じでも意識に差」というケースも: 計算テストの正答率に男女差がなくても、「計算が好き」という意識には差がある国・学年がありました。例えば、アメリカの小学4年生や中国の中学2年生では、男子の方が計算を好きだと感じる傾向が強いことがわかっています。
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南アフリカの特異な結果とその背景: これまでの国際調査(TIMSS)では南アフリカの女子の数学スコアが良い傾向にありましたが、今回の調査では計算力に男女差は見られませんでした。これは、今回の調査対象が「留年経験がない」「デジタル環境が整っている」といった比較的恵まれた層に絞られたためと考えられます。
調査の背景にある「STEM教育」と「ジェンダーギャップ」
世界中で、科学・技術・工学・数学の分野である「STEM(ステム)」教育の重要性が高まっています。しかし、この分野では依然として男女間の格差(ジェンダーギャップ)が大きな課題です。
これまでに行われた大規模な国際調査(TIMSSなど)では、数学のスコアに男女差が見られる国があり、その背景には子どもたちの「自信」の差が影響している可能性が指摘されてきました。
今回の調査では、算数・数学学習の入り口とも言える「計算」という特定の分野に焦点を当てています。算数全体で見られる傾向が、計算の段階でも同様に起きているのか、それともまだ差がないのかを詳しく探ることで、男女差の実態をより詳細に把握しようとしたものです。
調査方法について
今回の調査は、2025年4月から6月にかけて、アメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ、中国の5か国で行われました。各国から小学4年生と中学2年生を対象に、インターネットパネル調査によるランダム抽出で、合計1,500名(各国300名、学年ごとに男女各75名)が参加しています。
計算問題は各学年32問で、小学4年生は整数・小数・分数の四則演算、中学2年生は正負の数・文字式・方程式などが出題されました。
意識調査では、「計算が好きか」「計算力に自信があるか」の2項目について、5段階評価で回答を得ています。この回答を数値化し、肯定的な回答ほど点数が高くなるようにして分析が行われました。
計算テストの結果:多くの国で男女差なし
計算力に性別の違いがあるのかを検証するため、計算テストが実施されました。下のグラフは、小学4年生と中学2年生の平均正答率を男女別に示したものです。

グラフの数値を見ると、数ポイントの開きがある国もありますが、統計的に有意な差が認められたのは、イギリスの小学4年生(男子が7.4ポイント高い)とフランスの中学2年生(男子が5.8ポイント高い)の2グループだけでした。それ以外の8グループでは、統計的に男女差は確認されていません。
「実力」と「意識」のギャップ:計算力は同じでも「好き」に差があることも
計算力の測定に加え、子どもたちが計算に対してどのような意識を持っているかについても調査されました。下の図は、計算テストの正答率と計算に対する意識の男女差を比較したものです。黒枠で囲まれている箇所は、統計的に有意な男女差があったことを示しています。

この図からは、実力と意識の関係において、国や学年によって以下のような4つのパターンが見られました。
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正答率も意識も男子が高いケース: フランスの中学2年生では、計算テストの正答率と計算への意識(好き・自信)の両方で、男子が女子よりも高い数値を示しました。
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正答率は同じだが、男子の意識が高いケース: アメリカの小学4年生と中国の中学2年生では、計算テストの正答率に男女差はありませんでした。しかし、「計算が好き」という項目では、男子の方が女子よりも高い数値を示しています。
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意識は同じだが、男子の正答率が高いケース: イギリスの小学4年生では、計算テストの正答率に男女差がありましたが、計算への意識(好き・自信)には有意な男女差は見られませんでした。
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正答率も意識も男女差がないケース: これら以外の6グループでは、計算力も計算への意識も、統計的な男女差は認められませんでした。
保護者として考えたいこと
今回の調査結果を見ると、多くの国で小学生・中学生の「計算力」そのものに、大きな男女差がないことが分かり、少し安心した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、注目すべきは「実力は同じでも意識に差がある」という点です。例えば、アメリカの小学4年生や中国の中学2年生のように、計算ができるのに「好き」という気持ちには男女差があるケースが見られました。
「好き」という気持ちや「自信」は、その後の学習意欲や、将来の進路選択にも大きく影響する可能性があります。お子さんが「苦手だから」「嫌いだから」と諦めてしまわないよう、日頃から「計算楽しいね!」「よく頑張ったね!」といった前向きな声かけをして、学習への肯定的な意識を育んであげることが大切だと感じます。
もちろん、今回の調査だけでは全てを断言できませんが、このような国際的な知見は、私たち保護者が子どもの学習をサポートする上で、とても役立つヒントを与えてくれますね。
まとめ
今回の5か国国際調査では、小学生・中学生の計算力に、多くの国で明確な男女差は見られないという結果が出ました。一方で、計算力は同等でも「計算が好き」といった意識に差があるケースも存在することが明らかになっています。
この結果は、計算の「実力」だけでなく、子どもたちの「気持ち」に目を向けることの重要性を示唆していると言えるでしょう。
出典:公益財団法人 スプリックス教育財団

