調査結果から見えてきた、こども食堂の今
今回の調査(速報値)では、こども食堂の数が着実に増え、地域に根付いている様子がうかがえます。主なポイントをまとめました。
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全国のこども食堂の数は、2025年度に過去最高となる1万2,601カ所に達しました。
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公立の小学校・義務教育学校の約7割に迫る勢いで、全国の小学校区の約4割(校区充足率39.69%)に1つ以上のこども食堂がある状態です。
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年間延べ利用者数は、2021年度の推計と比べて2倍以上となる2,533万人。そのうち、子どもは1,732万人に上ります。

この数字を見ると、こども食堂が子どもたちだけでなく、多くの地域住民にとって大切な存在になっていることがわかりますね。
こども食堂が増え続ける背景
物価高騰が家計を圧迫する中で、こども食堂が増え続けるのはなぜでしょうか。調査からは、いくつかの理由が見えてきます。
政策による後押しと協働体制の強化
政府の「地域こどもの生活支援強化事業」のような政策や、デジタル庁が地域幸福度(Well-being)指標に「こども食堂の数」を追加するなど、こども食堂が地域社会で公共性の高い取り組みとして認識され始めています。これにより、活動の維持が制度面で支えられています。
また、こども食堂が増えている地域では、行政、企業、そして地域のネットワーク団体が協力し、立ち上げや運営を強力にサポートする体制が整っていることが目立ちます。例えば、大阪府や千葉県、和歌山県、岡山県などでは、自治体による支援事業の活用やサポートセンターの設置、地域ネットワークとの連携強化が進んでいるそうです。
多様化する活動目的と地域のつながり
こども食堂は、単に食事を提供する場にとどまらず、その活動目的や内容が多様化しています。子どもや家庭への支援に加え、「多世代交流」や「地域づくり」など、地域全体のつながりを育む役割を担う食堂が増えているのです。
こども食堂の7割以上が「参加条件は特になし」と回答しており、誰でも気軽に訪れることができる開かれた場所になっていることがわかります。一方で、「ひとり親家庭への支援」や「生活困窮家庭への支援」を主な目的とする食堂も多く、必要な人に手を差し伸べたいという思いも強く持っています。

こども食堂の98.2%が何らかの組織・団体と連携して運営されており、社会福祉協議会や行政、フードバンクなど、多岐にわたる支援を受けています。食材の提供はもちろん、場所の提供や物資の支援など、地域からの温かいサポートが活動を支えているのです。

運営を揺るがす課題と社会のイメージとのズレ
活動が広がる一方で、こども食堂の運営には様々な課題があることも明らかになりました。
資金・人材・広報の不足、そして物価高騰
運営者の方々が困りごととして最も多く挙げたのは、「運営資金の不足」と「必要な人に支援を届けるための周知・広報」(ともに47.2%)でした。次いで「運営スタッフ・ボランティアの不足」(42.2%)も大きな課題です。特に、古くから活動している食堂や運営者が高齢の食堂では「後継者不足」が深刻な問題となっています。
また、この1年間で「物価上昇による影響を感じている」のは84.7%と非常に高く、61.9%の運営者が「費用負担が増えた」と回答しています。開催頻度や料金、食事内容の変更を余儀なくされている食堂も14.2%あり、物価高騰が運営を圧迫している現状がうかがえます。
社会のイメージと現場実態のズレ
社会がこども食堂に期待する役割は、「子どもの食事提供」や「子どもの居場所づくり」に加え、「ひとり親家庭の支援」や「子どもの見守り支援(虐待防止)」といった支援目的が上位を占めています。
一方、運営者側が活動目的として重視するのは、「子どもの食事提供」「子どもの居場所づくり」に加え、「地域づくり・まちづくり」や「多世代交流」といった、交流やコミュニティ形成の側面も大きいことが調査からわかりました。この社会のイメージと運営側の実態との間にズレがあることが、活動の難しさや負荷の一因になっている可能性があります。
こども食堂の認知度とイメージの変化
「こども食堂の認知調査2025」によると、こども食堂の名前を知っている人は86.9%と非常に高いものの、活動内容まで知っている人は48.0%にとどまっています。
利用対象については、「生活困窮者(家庭)が行くところ」というイメージが昨年より減少(59.1%→51.7%)し、「誰もが行くところ」というイメージが昨年より増加(36.2%→42.5%)しています。これは、こども食堂が「特定の誰かのための場所」というより、「地域の誰もが安心して立ち寄れる場所」という“ひらかれた場”としてのイメージが広がりつつあることを示しています。
保護者として知っておきたいこと、できること
こども食堂は、子どもたちが安心して食事をしたり、地域の人と交流したりできる大切な場所です。物価高騰や人手不足といった課題に直面しながらも、多くの人々の善意と努力でその活動が支えられています。
私たち保護者も、もし身近にこども食堂があれば、その活動を知り、応援できることがあるかもしれません。
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地域のこども食堂を調べてみる: どんな場所で、どんな活動をしているのか、一度調べてみるのも良いでしょう。
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「ひらかれた場」としての理解を深める: 誰もが利用できる場所として、地域の子どもたちやその家族にとって身近な存在であることを知っておきましょう。
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支援の形を知る: むすびえでは、ファミリーマートの募金(夢の掛け橋募金)を活用した新規開設支援や、ふるさと納税型クラウドファンディングなど、様々な形でこども食堂を支える活動を行っています。私たちもできる範囲で、これらの活動を応援することができます。


むすびえでは、「こども食堂が全国のどこにでもあり、みんなが安心して行ける場所となるよう環境を整える」ことをミッションに活動しています。こども食堂がどんなことを大切にしているか、ぜひ一度ご覧ください。
シンプルなまとめ
こども食堂は、数字の上でも、また地域に根ざした活動としても、着実にその存在感を増しています。物価高騰などの逆風にも負けず、子どもたちの笑顔と地域のつながりを守ろうとする活動は、私たち保護者にとっても心強い存在です。地域にどんなこども食堂があるのか、一度調べてみるのも良いかもしれません。
出典:PR TIMES

