いじめの「重大事態」とは?その定義と現状
まず、「重大事態」という言葉について、少し詳しく見ていきましょう。これは、いじめ防止対策推進法という法律で定められた、特に深刻ないじめの状態を指します。
具体的には、「子どもの命や心、体に重大な被害が出た疑いがある場合」や、「いじめが原因で学校に長期間行けなくなった疑いがある場合」がこれにあたります。簡単に言えば、普段のいじめよりも、より緊急性が高く、組織的な対応が求められる状況のことです。
このような重大事態が発生した、またはその疑いがある場合、学校は速やかに調査を行い、その事実関係を明確にする義務があります。その調査結果がまとめられたものが「重大事態調査報告書」と呼ばれ、今回、国が初めてそれらを収集・分析したのです。
なぜ今、国が動き出したのか?過去最多の発生件数
国が今回、これらの報告書を分析するに至った背景には、重大事態の件数が年々増え続けているという深刻な状況があります。

いじめ防止対策推進法が制定されてから約10年が経ちますが、重大事態は減少するどころか、過去最多を更新し続けています。この現状に対し、いじめ防止の取り組みを根本から見直す必要があるという強い意識が、今回の分析につながったと言えるでしょう。
これまでは、各自治体で報告書が作成されていましたが、国に提出する義務は基本的にありませんでした。しかし、この増加傾向を受けて、こども家庭庁と文部科学省が全国の自治体に報告書の提出を呼びかけ、国主導で初めて分析が行われたのです。
この分析実務を担当したのは、公益社団法人子どもの発達科学研究所です。海外の先行研究なども参考にしながら、どのような状況でいじめが重大化しやすいのか、複数の教職経験を持つ研究者が仮説を立て、報告書を読み込んで検証していきました。
新たな視点:「交際関係」や「部活動」にも注目
今回の分析結果をもとに作成されたのが、「いじめの重大化を防ぐための留意事項集」と「いじめの重大化を防ぐための研修用事例集」です。

これらの資料には、これまで学校現場で見過ごされがちだった、あるいは「介入しづらい」とされてきたトピックが、いじめの重大化につながり得る要素として挙げられています。
特に注目すべきは、「交際関係の開始・解消、性的なないじめ」や「部活動におけるいじめ」といった項目です。子どもたちの恋愛や交友関係のトラブルは、「プライベートな問題だから」と学校が深く踏み込まないケースも少なくありませんでした。しかし、今回の分析では、こうしたトラブルへの対応が遅れた結果、重大事態に発展した事例が複数確認されたとのことです。

部活動もまた、子どもたちが密接に関わる場であり、人間関係がこじれると深刻ないじめにつながるリスクがあることが指摘されています。これらの新しい視点は、私たち保護者にとっても、子どもたちの日常に潜む変化に目を向ける上で非常に大切な情報となるでしょう。
家庭でできること:子どもとの対話と変化への気づき
今回の分析結果は、いじめ対策が学校だけの問題ではなく、家庭でも意識すべき点があることを教えてくれます。
子どもたちの交友関係や部活動での様子は、普段から注意して見守りたいものです。例えば、友達との関係で悩んでいる様子はないか、部活動に行くのを嫌がっていないかなど、些細な変化にも気づけるよう、日頃から子どもとの対話の時間を大切にしましょう。
「今日は学校で何かあった?」「部活はどうだった?」といった何気ない会話からでも、子どもの気持ちや状況を理解するヒントが見つかるかもしれません。また、もし気になることがあれば、一人で抱え込まず、学校の先生やスクールカウンセラーなど、専門家に相談することも大切です。
専門家による無料セミナーのお知らせ
今回の分析結果や「留意事項集」の内容について、公益社団法人子どもの発達科学研究所の和久田学所長・主席研究員が解説するオンラインセミナーが開催されます。対象は教職員や教育委員会の方々ですが、教育に携わる方であれば参加可能です。

開催日時:2025年12月19日(金) 13:30~15:00(後日録画配信あり)
開催方法:オンライン(Zoomウェビナー)
参加費:無料
定員:500名(先着登録順、要事前申込)
申込締切:12月18日(木)12:00
詳細および申し込みは、以下のフォームからご確認ください。
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まとめ
いじめの重大事態が過去最多を更新しているという事実は、私たち保護者にとって決して看過できない問題です。しかし、国が初めて本格的な分析を行い、これまで見過ごされがちだった要因に光を当てたことは、今後のいじめ対策をより効果的に進めるための大きな一歩となるでしょう。
私たち親ができることは、子どもたちの日常に寄り添い、小さな変化に気づき、対話を続けることです。そして、学校や専門機関と協力しながら、子どもたちが安心して学校生活を送れるよう、支えていくことが何よりも大切だと改めて感じます。
関連資料
出典:PR TIMES (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000022.000169842.html)

