学校生活をもっと豊かに!飛騨市発の「学校作業療法室」が全国に広がる可能性
お子さんの学校生活、毎日楽しく過ごせているでしょうか?勉強のこと、友達とのこと、体調のことなど、子どもたちが学校で抱える困りごとはさまざまです。そんな子どもたち一人ひとりに寄り添い、学校生活をより豊かにする新しい取り組みが、岐阜県飛騨市で進められています。

「学校作業療法室」ってどんなところ?
飛騨市では、市内の小中学校に「学校作業療法室」を設置し、作業療法士(OT)が定期的に学校を訪れています。作業療法士とは、単に体の機能回復を目指すだけでなく、その人が望む「自分らしい生活」を送れるように、身体、心、認知機能、そして生活を取り巻く環境など、全体的な視点から支援を行うリハビリテーションの専門職です。学校では、子どもたちの学習や生活での困りごと、先生方が子どもたちへの対応で悩んだ際の相談に乗り、子どもたちが生き生きと学校生活を送る手助けをしています。

なぜ今、この取り組みが注目されるのか
近年、学校現場では様々な課題が深刻化しています。文部科学省の調査によると、特別な教育的支援が必要な児童生徒の割合は、2012年の6.5%から2022年には8.8%へと増加しました。加えて、先生方の過重労働や精神的な不調、不登校の子どもの増加、さらには小中学生の自殺者数が増加傾向で、過去最多の数値になっているという、大変胸の痛む状況も報告されています。

このような状況の中、地域に関わらずすべての子どもたちが安心して学び、先生方が教育に専念できる持続可能な教育システムが強く求められています。飛騨市で2023年から始まった「学校作業療法室」の取り組みは、実際に児童生徒の活動や参加の改善、主体的な姿勢の増加、そして先生方の負担軽減につながるという成果を上げています。
教育・保健医療・行政が連携する新しいモデル
飛騨市と名古屋市立大学の研究チームは、この「学校作業療法室」の取り組みを、他の地域でも実現できるインクルーシブ教育システムとして確立し、全国に広げていくプロジェクトをスタートさせました。これは、教育現場のウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)向上を目指す大きな挑戦です。
このプロジェクトでは、教育・保健医療・行政の3分野が連携し、具体的に次の項目について実施します。
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エビデンスに基づくモデルの構築: 不登校数や医療受診の動向、福祉相談件数・内容などを調査し、学校作業療法の効果を個人、学級、学校、自治体など多角的に検証します。
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技術普及ツールの開発(ICTシステム): 多地域展開を見据え、教育現場で支援するOTの質を向上・保障するためのICTシステムの開発を進めます。
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OTの育成: 飛騨市での学校現場で実際に作業療法を展開している作業療法士によるOJT(職場内訓練)の実践を通じ、その方法や実践ツールなどを確立します。
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全国ネットワークの構築: 教育・保健医療・行政連携によるインクルーシブ教育システムを多地域展開するために、コンソーシアムの設立を目指します。実践水準の標準化、人材育成の共同運営などに取り組み、長野県駒ケ根市、長崎市、福島市などの参画を想定して進めていきます。

子どもたちの笑顔のために、地域全体で支える教育へ
この取り組みは、特別な支援が必要な子どもだけでなく、すべての子どもたちが安心して学校生活を送り、自分らしく成長できる環境を作ることを目指しています。先生方は教育に集中でき、子どもたちは一人ひとりの個性を大切にしながら主体的に学べるようになるでしょう。
私たち親としては、子どもたちが学校で困りごとを抱えずに、毎日笑顔で過ごしてくれることが一番の願いです。飛騨市から始まるこの新しい教育モデルが全国に広がり、すべての子どもたちが健やかに成長できる社会になることを期待しています。

